前立腺癌について
近年、日本人男性に著明に増えている癌で、食生活の欧米化、すなわち高脂肪の食肉摂取との関係も指摘されています。アメリカではすでに前立腺癌は罹患率第1位、死亡率は肺癌についで第2位と社会問題にもなっており、日本でも1998年の前立腺癌の死亡率は8位くらいですが、その後の癌死亡の増加率では第1位となっており、アメリカを追従しているようです。
早期発見の方法は?
まずは、なんといっても血液検査で、血液中のPSAを調べることをお勧めします。最近は市町村、職場の健診でも一部施行されている場合もありますが、まだ全般的に健診では普及していません。
PSAとはProstatic Specific Antigenの略称で、日本語では前立腺特異抗原といいます。PSAの正常値は4.0ng/ml以下です。精密検査を行うとPSAが4.0~10.0で約20%、10.0以上では約60%で前立腺癌が発見されています。
前立腺癌早期発見のためには、PSA検査は50歳以上の男性で行うべきとの報告があります。
精密検査はどういうことをする?
癌があるかどうかは、組織をとって調べます。
肛門から棒状の超音波装置を挿入し、前立腺の位置を確認しながら針をさします。針には溝がついていて、そこにひっかけて組織をとってきます。その組織を顕微鏡でくわしく見て、癌細胞がないかどうかを調べます。
一泊入院して検査をする施設もありますが、当院では外来での日帰り検査をおこなっています。
前立腺癌が発見されたら
まず、癌の進行度をしらべるための検査をおこないます。
一般的にはCT(コンピューター断層法)、MRI(磁気共鳴画像法)、骨シンチグラフィーなどです。
CTでは内臓やリンパ節への癌が転移していないかをしらべます。
MRIは癌が前立腺被膜をこえて周囲の膀胱や直腸へはみ出していないかどうか調べます。
骨シンチグラフィーでは前立腺癌では転移しやすいといわれる骨への転移癌の有無をしらべます。
治療方法は?
治療方法は癌の進行度によって違います。大まかに言うと、進行していない癌(早期癌)では根本から癌をなくすことを目的とした治療を選択します。
具体的にいうと手術療法もしくは放射線治療になります。一方、進行している癌(進行癌)ではホルモン療法といって男性ホルモンを抑えるくすりを使用します。ただし、進行度にくわえて年齢、全身状態(合併症の有無もふくむ)などの要件も考慮して、総合的に判断しますので、必ずしも先に述べた治療法とは異なる場合もあります。
また、早期癌と進行癌の中間に位置する局所進行癌というものもあり、この場合は複数の治療方法を組み合わせて治療方針を立てます。